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2021.03.24

∞∞ Data Designers ∞∞

~電通デジタル 押山 裕之氏

ビジネス環境のオンライン・デジタル化が急激に進む近年、企業のマーケティング活動もデジタルツール活用やDXへの取り組み、組織体制を整えるなどの変化が見られます。そのような企業に対して、データ活用を中心にマーケティング支援を行う株式会社電通デジタル サービスマーケティング事業部 コンサルティングマネージャー 押山 裕之氏にお話を伺いました。

インタビューは前後編の2部構成としており、まずは前編として、DX推進に必要なことや顧客データ統合の必要性などについてご覧ください。
-近年のBtoBマーケティングへの企業の取り組みをどのように感じていますか

昨年くらいから、BtoB企業がマーケティングに取り組むこと自体は増えているというのが実感です。言うまでもありませんが、コロナウイルスの影響も大きいと思います。営業は訪問という対面チャネルが制限されたため、オンライン商談が浸透し、デジタルツールを使うようになりました。マーケティングにおいては、展示会やオフラインのセミナーなどが制限され、ウェビナーやWebチャネル強化などが進みました。これらのことに強制的に取り組まざるを得なかったというのが大きな背景だと思います。
経営者側もこのような現場の取り組みや世間の状況を理解し、売上確保のための手段として、デジタル・オンライン化の必要性を感じていると思います。加えてバズワードとなってきているDX(デジタルトランスフォーメーション)という言葉に敏感に反応して、現場に取り組むように指示を出しているケースが多いのではないかと思います。
業務を進めるうえでデジタル化をしなければいけない現場と、世の中のDXの流れに反応した経営者の双方の意識が、「何かやらなければ」という危機感につながっているというのが現状ではないでしょうか。


-DXという言葉が独り歩きしているようにも感じますが、本質は何でしょうか

まずDXという言葉にはいろいろと種類があると思いますが、外面的なキーワードでもあるので、それをどう捉えるかが問題かなと思います。今、日本で言われているDXは、2018年に経済産業省が「DXレポート」を公表し、推進してきたものを指す場合が多いように見受けられます。これが当初から少し誤解された形で進んでしまった部分があると感じています。「DX=システム投資」として理解され、基幹システムやワークフロー、リモートワークツールなどの導入が進み、その認識が強い人も多いようですが、DXの本質って本当は違うんですよね。
米ガートナー社によると、「デジタルオプティマイゼーション(最適化)ではなく、デジタルを活用して業務やビジネスを変革させることがデジタルトランスフォーメーションである」と定義をしていますが、まさにその通りだと思います。

2020年12月に「DXレポート2(中間とりまとめ)」(経済産業省)が公表されましたが、レポートには9割以上が全社的なDXに取り組めていないと記載されています。残りの1割についても、そのなかで成功している企業はさらに絞りこまれてしまうでしょう。「DXとは何か」というのをしっかりと語れるベンダーや事業社側の人も少ないというのが世の中の現状で、まさにバズワード化してしまっていますね。


-DXの定義が必要なのでしょうか

誰かがDXを定義付ければ皆が成功するものというわけではないですね。ビジネスモデルに近いようなものなので、世間の誰かではなく、現場のマーケターやビジネスの変革を推進する人たちが主役だと思います。国やベンダーなどではなく、実務で変革をした経験や成功体験がある人たちがもっと先導していけばいいと思います。そのようなエヴァンジェリストみたいな人たちはきっと今後必要だと思います。
先ほど取り上げた「DXレポート2」のなかでもデジタルツールやシステムを導入することがDXのゴールではなく、ビジネスを変革するための組織や人材、ナレッジといった点の強化が課題であることにフォーカスし直したことは正しい方向に向かっていると感じます。
DXに必要な2つの要素
-オンラインやデジタルへのシフトが加速する中でDXを成果に結びつけるためのポイントは何でしょうか

BtoBマーケティングにおけるDXは、まだまだこれからという状態ではあるものの、1つの答えとしてソフトとハードという2つの要素が必要です(図参照)。
ソフト面では、顧客体験設計やカスタマーサクセスに取り組むことでLTV(Life Time Value:顧客生涯価値)を伸ばしていくという考え方に向かうトレンドがあり、それを実現するためにビジネスモデル変革へ取り組むケースが増えています。
ハード面においては、顧客データを統合する企業が多くみられます。部門や事業カンパニー毎に、これまで別々で管理してきた顧客データを一元化し、効率化、最適化、新たな価値付けをする活動につなげていくケースが増えています。実際に支援させていただいている企業も含めて、データ統合に関する相談はよくいただきます。
成果につなげていくためにはソフトとハードの両方が同時に実現されて初めてDXが成功します。もう少し具体的に言うと、データだけあっても打ち手につながらなければ価値はなく、新しいサービスやそれに伴う顧客体験設計ができても、ターゲティングするためのデータが揃っていなかったり、実行結果やデータが目的に沿った形で蓄積できないと、再現性や継続性はなく、マーケティングとしては成功が難しくなるでしょう。


-顧客データ統合に苦労する企業は多いですか

多いですね。今までやってこなかった部分のつけが回ってきているというような感じですね。全社で同じ形で顧客データを保有していれば良いのですが、日本企業の多くが部門や関係会社で異なるシステムを使い、ファイル形式やデータレイアウトもバラバラ、IDの付け方も統一されていないような現状です。さらに属性だけではなく行動結果なども含めて、全て持ち方が違うものを1つにまとめようとすると、一筋縄ではいきません。それは、それぞれのシステムをひとつずつ手術するようなイメージです。


-部門毎では目的に合った形で最適化されているが、全社DXとなったときに部分最適でしかないということですか

そうですね、少し雑な言い方をすると、そこまでデータを使わなくてもビジネスが成り立ってきたことも要因かと思います。それは人の力、対面の力によるところが大きいような気がします。しかし、戦場はリアルからオンラインにシフトしています。そこで、初めに思いつくのがデータの活用ですが、いざ活用しようとするとデータが不揃いであるため、統合の必要性を感じるといったところでしょうか。しかし、やったことないことをやろうとすると失敗が多いですよね。構想だけで終わってしまったり、システム部門からそんなことできないと言われてしまうなど、なかなか進むスピードが遅いという話はよく聞きます。

また、顧客データ統合のビジョンや目的が設定・共有されていないと、部署間の連携が難しかったり、必要性に疑問が生じたり、一丸となりにくくなります。これまで営業とマーケティングの連携をすればよかったものが、各部門で保有するデータを統合・管理・活用していくためには、組織横断的なシステム部門が必要になります。ただ、組織体制を整えて取り掛かってみると、データ活用の目的が曖昧だったり、何をどこまで決めればよいのかというところがなかなか進まず、その大変さに気づきます。そして進まないのは別の部門の責任だとなすりつけあいが発生します。


-横断的な取り組みに際してのトップダウンとボトムアップについて、どう考えますか

絶対的な正解は無いですが、少なくとも両方がないと成功しないと思います。経営層がやることを極論すれば、「組織をつくる」「人材を採用する」「人材を配置する」に関する意思決定です。逆にボトムアップ側は、リーダーとなる人が、ミッションを理解し、いかにその熱意や情熱をもって推進できるかがポイントで、この両輪が回らないとスムーズには進みません。
支援させていただいたなかでは、大手企業になると経営層が危機意識を持っており、組織や体制を整えようとすること自体はさほど問題はないと感じます。問題は、それを推進するリーダーや現場のメンバーがビジョンや目的の作り方、課題設定、具体的なノウハウなどが、まだ十分に追いつけていない部分があります。

未経験の領域に踏み込もうとしているので難しい部分もありますし、成功事例やベストプラクティスを持っている人がまだ少ないということもあると思います。ですが、内部の組織を巻き込んでプロセスや自社のビジネスそのものを変革させていかなければならないので、広告やプロモーションを支援するのとは訳が違い、外部パートナーだけでは支援しづらい内容でもあります。だからこそ、スキルのインハウス化・内製化のニーズが非常に高まっていると感じますね。


-インハウス化するスキルはどのようなものが求められますか

ひとつはデータを整理して使える状態にして活用する「データを扱うスキル」です。もうひとつは「顧客をみるスキル」で、これが特にインハウス化の必要性があります。一見長けているように見える人でも中(提供側)にいると、自社製品をベースに見てしまうケースが非常に多いので、市場やユーザーが、「何に一番バリューを感じているのか」、「業務の中で一番それを採用するメリットって何なのか」をしっかりと理解できているかというと、そうでもありません。最終的に商品・サービスを売ることでビジネスが成り立つものの、その背景にあるお客さまの課題や業務のプロセスなどをきちんと理解すると、実は物が欲しいのではなく、“早く欲しい”から頼んでいる、“便利に調達できる”から選んでいるということがあります。ただ、特にBtoBの場合、提供側からすると、その性能を高めたり、新しい機能を付けたり、バリエーションを増やしたりすることを躍起になってやるんですね。顧客は別にそこにベネフィットを感じて取引しているとは限らなくて、もちろん一部あるものの、一番のメリットは違うところにある可能性があります。クリステンセンの著書「ジョブ理論」の中にもある通り、何かしらの「片づけたい業務や課題」があり、それを解決するためにその商品・サービスを購入していることを理解して整理するスキルが必要です。
それを、突き詰めるのがマーケターという仕事であると思います。では、そのスキルをどうやって高めるのかという話になると、営業とマーケティングのナレッジシェアが重要です。ハイパフォーマーの営業パーソンに聞いたり、同行するといったことも経験上では良い手法だと思います。ビジネスモデルが変わらないのであれば顧客の片付けたい仕事も変わらないと考えがちですが、世の中変わっていきます。特に今回のコロナのような状況ですと、顧客の課題は変容しているので、それをしっかりとマーケターが顧客や現場を把握している営業と同じ目線でとらえられているかが重要です。営業パーソン一人ひとりは自分の顧客を理解していればよいですが、マーケターは市場全体を見なければいけませんので、顧客の課題をアップデートし、整理することはマーケターこそができる仕事であると思います。
▼後編はこちら
“データは友達” DX時代のBtoBマーケティングを科学する~電通デジタル 押山 裕之氏~(後編)


Data Designersとは・・・
データを読み解き、価値を高めることを「データをデザインする」と意味付け、その分野で先進的な取り組みをして活躍する方を紹介するインタビューシリーズ

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