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  • 景気の回復に向けて期待される観光産業の行方~景気のミカタ~

2023.10.27

再び上向いてきた観光産業、人手不足の解消が喫緊の課題

今回の景気のミカタは、国内景気の伸び悩みが続くなかで、景況感が持ち直した観光産業への期待とともに解決すべき課題について焦点をあてています。

観光産業の景況感はインバウンド需要などを追い風に持ち直し

図表1
2023年9月の国内景気は、前の月と比べて2カ月連続で悪化しました。原材料やガソリンなどエネルギーコストの高止まりに加えて、生活必需品の値上げなどで消費者の節約志向が高まってきたことも背景のひとつです。また、中国など海外経済の停滞や季節外れの猛暑もマイナス材料でした。こうしたことから小幅ながらも広範囲の地域や業種で下落傾向が続くこととなりました。

一方で、半導体不足の緩和により自動車生産が好調だったほか、株高による資産効果、10月にスタートしたインボイス制度へのシステム需要などはプラス材料でした。とりわけ、シルバーウイークの期間中を含め天候に恵まれたことによる観光地などの賑わいや、インバウンド需要などを追い風とした観光関連の改善が目立ちます。実際、帝国データバンクが作成している観光産業の景況感を表す観光DI[1]は4カ月ぶりに上向きました(図表1)。

観光産業のさらなる発展に人手不足の解消は欠かせず

図表2
宿泊業を営む企業からも、景気が上向いていたというコメントが多く寄せられています。

・円安による単価上昇、中国以外の訪日客数の順調な回復により、宿泊収入が好調に推移。想定以上に国内旅行市場が強いこともあり、景気は非常に良い(東京都)
・観光業界は、コロナ後の自粛緩和により、今まで出かけられなかった人たちが多数動いているので、コロナ前に戻った印象(群馬県)
・コロナの影響が随分と小さくなり、海外からのお客さまも戻って来た(岐阜県)
・コロナ感染症の位置づけが5類へ変わったことを受けて、宿泊は反応良く売り上げも増えてきたが、宴会部門はなかなか数字には表れなかった。ようやく秋口から年末にかけての宴会需要が顕著に動き始めた(岡山県)

もちろん「団体ツアーの動きがよいが個人の動きが悪い」(秋田県)のように課題もありますが、総じてみると9月の旅館・ホテル業界は好調だった様子がうかがえます。

さらに観光業の持ち直しは、レンタカー業界にも広がりを見せていました。

・観光需要の回復と、それにともない法人需要も回復している(茨城県)
・レジャー関連は好調な状況が継続している。インバウンド需要は、時期的な変動も少なく高水準が続いている。ビジネス需要は、卸売物価の高騰や人材不足の影響を受けて投資意欲が減衰している企業も散見されるが、総体的には堅調な地合いが続いた(山梨県)

国内景気に伸び悩みがみられるなかで、観光産業には大きな期待が寄せられています。しかし、過去に当コラム[2]でも述べてきましたが、人手不足の問題は喫緊の課題として残されています。
2023年9月時点において、正社員の人手が不足していると感じている企業の割合は、全産業で51.6%だった一方で、観光産業では55.4%となっています。なかでも観光バスやレンタカーなどを含む「旅客輸送サービス/輸送設備レンタルサービス」(73.2%)と、「宿泊サービス」(71.3%)は7割を超えています。

非正社員の人手不足はさらに高く、観光産業は58.2%にのぼり、全産業の30.9%を27.3ポイント上回っています。非正社員では「宿泊サービス」のほか「飲食サービス」も不足を感じている企業が7割台です。

今後の観光産業がさらに拡大していくためには、成長・安心できる職場づくりや働き方の多様性を広げること、慣例にとらわれない人事制度の見直しなど、「人材確保・人手不足解消の7カ条」[3]を可能な限り実行していくことが重要となるでしょう。


[1] 観光DIは、観光産業に属する企業の景気判断を総合した指標。観光DIは0~100の値をとり、50より上であれば景気が「良い」、下であれば「悪い」を意味し、50が判断の分かれ目となる。

[2] 「急回復する観光産業に人手不足という名の危機~景気のミカタ~」2023年5月19日

[3] 帝国データバンク「企業における人材確保・人手不足の要因に関するアンケート」2023年5月17日発表

(情報統括部 情報統括課 主席研究員 窪田剛士)

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