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  • 【レポート】グローバル取引先管理セミナーレポート

2020.02.27

帝国データバンクでは「海外」をテーマとしたセミナーを時機に合わせて開催しています。今回は、「グローバル取引先管理セミナー ~気づかぬうちに迫るコンプライアンスリスク~」と題して、提携先であるビューロー・ヴァン・ダイク社より講師を招き、近年注目度が高まっている海外の法規制を主対象としてコンプライアンスチェックについて解説していただき、帝国データバンクからはグローバルレベルでの取引先管理を実現した企業の事例を紹介しました。
(セミナーの一部をレポート形式で紹介します)

■担当講師
第1部
ビューロー・ヴァン・ダイク・ エレクトロニック・パブリッシング株式会社(以下BvD)
事業会社セクター シニアセールス 内田 芳裕 様

第2部
株式会社帝国データバンク
営業推進部営業開発課 デジタルコミュニケーション推進チーム 岡田 明

第1部 グローバル基準でのコンプライアンスチェックの必要性

昨今、不祥事や法令違反を問われる報道が相次いでおり、中にはグローバル企業が海外の法令に違反したとして多額の制裁金を科されるケースも発生するなど、コンプライアンスリスクが高まっています。これらのリスクが高まっている要因の一つは、海外の法規制の域外適用です。域外適用される法規制の例としては、GDPR(EUの定める一般個人情報保護規則)やFCPA(米国の外国公務員腐敗防止法)などがあり、法令違反が認められた場合、その法規制の制定国以外にも影響を及ぼします。

グローバル基準での規制対応
近時、海外ビジネスを推進する企業が対応すべき規制対応のテーマは大きく3つあります。

1) 貿易管理
2) 贈収賄対策
3) AML/CFT

3) は主に金融機関を対象としたもので、今回のセミナーでは深く取り上げませんでしたが、2019年10月からFATFという国際的な規制機関が日本の金融機関を対象とした審査に入りました。金融機関への規制強化の流れにはありますが、規制強化の波は事業会社に波及してくる日もそう遠くはなさそうです。

貿易管理

貿易管理で対応すべき規制は、日本では経済産業省が管轄している安全保障貿易管理で、大量破壊兵器の開発を行っているおそれのある国やテロリストに、製品や技術が軍事転用されることのないよう管理することです。

その管理とは具体的に、輸出する品目が省令で定められた軍事転用の可能性のある製品に該当しないかを確認すること、輸出相手がテロ指定国家・テロリスト、大量破壊兵器の開発を行っている団体ではないか確認することです。
そのような大量破壊兵器の製造や安全保障上の懸念のある団体は、取引制限先として外国ユーザーリストとして公表されています。

貿易管理の観点で、近年話題となっているのが米国のOFAC(財務省外国資産管理室)規制です。OFACは米国が安全保障上の観点から自国に影響を与える可能性のある国家や団体、個人、自然人との取引を制限しています。OFACでは安全保障上の懸念のある取引制限先(団体・人物)をSDNリスト(取引制限者リスト)として公表しており、リストに掲載されている団体・人物が50%以上出資する企業との取引も規制の対象としています。

コンプライアンスの世界では、外国ユーザーリストやSDNリストなどを総称してSanction(サンクション)リストと呼んでいます。
近年、グローバルレベルでリスクとなっているのは、サンクションリストに記載のある団体・人物およびその出資する企業が取引先と同一であるかが特定できず、規制に違反してしまうことです。実際に、日本企業ではありませんが、制裁リストに記載されたロシア企業の子会社と取引をしてしまったことで同規制の違反事例も出ています。このような違反を未然に防げなかった原因は、第三者の提供するスクリーニングツールを用いて制裁リストとの照合をする際、商号検索のみの設定で、サンクションリストに記載のある企業と異なる商号かつ50%超出資する子会社を検索しきれなかったことにあります。

BvDの海外企業データベース「Orbis」を用いれば、商号検索だけでなく、資本関係でつながった企業も簡単に検索でき、サンクションリストとの照合も可能にします。

セミナーでは実際にOFACのウェブサイトから団体を検索するデモンストレーションを実施しましたが、単独の団体名で検索するだけでも手間がかかることに加え、上述の通り50%ルールにより規制対象となる企業は、団体名・人物名だけの検索では完全性が担保できないことを説明しました。

贈収賄対策

グローバルレベルのコンプライアンスでリスクとなっているものの二つめは、贈収賄対策です。日本では公務員を相手に贈賄を行い取引上の便宜を図ってもらうことは禁止されていますが、海外でも同様に公務員への賄賂行為を禁止する法律があります。近年では、大手電機メーカーの北米子会社が米国の公務員に贈賄行為を行ったとしてFCPA(米国の連邦海外公務員腐敗行為防止法)に違反とみなされ、2億8,000万ドルもの課徴金を支払って和解したケースも出ています。

このように、FCPAをはじめとする公務員への贈収賄に関する法律は英国のUKBA(贈収賄禁止法)や日本の不正競争防止法のように規制されています。そのため、法律違反を起こさないためには、取引相手が外国公務員ではないかというチェックが必要です。「Orbis」では取引予定企業の役員、株主、親会社、実質的支配者まで遡って、国有企業やPEPと呼ばれる公的要人が含まれないか、外国公務員と同一の人物ではないかをチェックすることができます。

FCPAは米国の法律ではありますが、域外適用(制定国以外にも影響のおよぶ法規制)され、そのような法規制が増えていることで、海外の法規制のコンプライアンスリスクが高まっていることを説明しました。

組織をまたいだ全社的な対応の必要性

近年コンプライアンスリスクが高まっていることについて説明してきましたが、多くのチェック対象があり、それらを実務上確認するとなると、企業単位でみた場合、複数の部門をまたぐ全社的な対応が必要になります。

●経営企画
●財務・審査
●調達部門
●貿易管理
●法務・コンプライアンス
●監査・内部統制
●情報システム

例えば、経営企画部門ではM&Aや提携検討をする際に、相手企業のコンプライアンスチェックが必要になりますし、調達部門ではサプライヤー管理として資本関係なども調べる必要があります。また、貿易管理ではサンクションリストとの照合が必要です。
例えば、OFAC対応について調達部門と輸出管理部門で相手先の資本関係の情報が必要になりますが、チェックした情報を取引先データベースに記録を残して管理するためには情報システム部門との連携も必要になります。

大手企業では、各部門でのコンプライアンスチェックを実施した後に、法務部門で再チェックするという業務フローを組んでいるところもあり、コンプライアンスチェックは単独の部門で完結せず、全社をまたぐ対応が必要になっているのが実態です。

海外企業データベースを用いたコンプライアンスチェック

コンプライアンスチェックをもれなく、効率的に行うために、海外データベースを用いた方法を紹介しました。BvDが提供する海外企業データベース「Orbis」には、海外企業の属性情報だけでなく、資本・人的関係でつながった企業・人物の情報も収録されており、それら団体・個人名がコンプライアンスチェックに必要なリストと連携しています。
具体的には、LexisNexis(レクシスネクシス)社が規制対応に必要な取引禁止企業や公的要人などのリストをデータベース化しており、「Orbis」に収録されている企業名、人物名で同一のものがあれば、アラートを表示するというものです。

また、「Orbis」では当該企業の実質的所有者・最終親会社・支配株主・子会社などの資本・人的関係でのつながりが構造化されているため、当該企業のみならずグループの検索ももれなく効率的に調べることができます。
前述のように、OFACのサイトで単体の企業名で調べることは誰でもできますが、実質的支配者や当該企業と社名の異なる子会社まで網羅的に同サイトで調べることは、手間も時間もかかるうえに完全性を担保できません。
このコンプライアンスチェックという業務は、「漏れ」があっては対策をしていないと同義とされるため、注意が必要です。

コンプライアンスチェック業務を管理する
コンプライアンスチェック業務は取引先を確認する(=スクリーニング)だけでは終わりません。取引先を調べた結果を記録しておく必要があります。事例としては、取引先のスクリーニングを実施した結果を証跡として残すために基幹業務システムと連携した取引先マスタを更新できる仕組みづくりをされた大手企業はいらっしゃいますが、基幹業務システムと連携をさせていくには大規模なシステム改修や設計が必要となります。

BvDでは、コンプライアンスチェック用のクラウドツール「Compliance Catalyst」を有しており、システム開発不要で導入可能なツールをご用意しています。
近時、コンプライアンスチェック用途でのお問い合わせが増えています。

第2部 他社事例に学ぶ海外取引先管理

第2部では帝国データバンクから他社事例に学ぶ海外取引先管理として、取引先管理に用いられる海外企業情報を概観し、お客さまが海外取引先管理にどのような課題をお持ちなのか、また取引先管理を実現された事例を紹介しました。

海外企業情報の概観
海外企業の取引先管理について、ここでは決算情報が取得できるかどうかについて紹介しました。世界を概観すると、決算情報が取れる地域と取れない地域、決算情報が開示されない国もあります。ヨーロッパは決算情報が取得しやすく、アジアでは東アジアの情報が取得しやすい傾向にあります。アメリカでは未上場企業の場合、情報開示義務がなく、企業調査に協力する文化もないため、決算情報を得ることはほとんどできません。

海外取引先管理の課題
アメリカのように取引先管理をするにも決算情報が取得できない国では、どのように管理すればよいでしょうか。セミナーではアメリカの審査担当者の業務例を紹介しました。

ただ、グローバル基準では現地法人が行っている取引先管理のすべてを日本の本社から行うことは非効率で、業務上の負荷もあるため難しいのが実態ではないでしょうか。
そのため、現地法人に対して業務の切り分けを行うことが必要で、本社・現地法人でなにをどこまで管理するのか、業務範囲を明確にすることが最初のステップになるでしょう。

第1部で説明がありましたように、近年は取引先管理の中で与信管理だけでなく、コンプライアンスリスクの管理も求められるようになってきており、審査のご担当者が与信に加えて、コンプライアンスチェックの一次スクリーニングを担当されている企業も多くあると聞きます。そのような場合、従来までの企業情報のみならず、グループ企業の情報やコンプライアンス情報も必要となります。

海外取引先管理の仕組み作りを実現した事例

セミナーでは海外取引先管理の仕組み作りを実現した2社の事例を紹介しました。

1つ目の事例は、海外現地法人の取引先に対する債権額、取引額を毎月把握し、その取引先の信用度の良し悪しを財務スコアでモニタリングしていくものです。そのためにまず、現地法人が保有する取引先データを元に、海外企業データベースを用いて企業コードが何番であるかを検索し、特定できたものには企業コードを付番するという名寄せをしました。
企業コードが特定できれば、属性情報や財務スコア、親会社情報、グループ企業情報などを付与することができます。そのように企業情報が管理できる状態になれば、自社で有する債権額や取引額の情報を企業情報に加えて、日本本社から海外現地法人の取引先管理ができる状態が実現しました。

もうひとつの事例は、基幹業務システムの刷新に合わせて、グループで企業情報を活用して与信管理の高度化を実現したものです。
いずれの例にも共通するのは、海外取引先を管理するには、取引先の企業マスタを整備し、運用できる仕組みを作ることが必要ということです。

終わりに

近年、海外取引先の管理にはコンプライアンスチェックの概念も必要になってきています。従来、与信管理を担当していたところがコンプライアンスも見る必要が出てきたという企業様のお話もあるように、一部門だけでは完結しないこともあります。しかしながら、コンプライアンスチェックも与信管理も「漏れ」があると元も子もありません。適切な取引先管理を実現するには、システムやマスタの整備なども関連してくるため、複数部署をまたいだ全社単位でのプロジェクトを立ち上げられるケースも多いです。
データベースを用いて取引先マスタの整備、海外取引先管理、コンプライアンスチェックに課題のある方はお気軽にお問い合わせください。


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