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  • 【レポート】AML対応情報交換会を開催(前編)

2020.03.27

Orbis活用およびAML対応情報交換会
グローバル企業データベース「Orbis」は、AML/CFT業務、具体的には海外送金時や海外投融資におけるCDD・KYC※の高度化にお役立ていただいています。今回は、「Orbis」を導入済の金融機関様を主対象に、どのようなシーンで「Orbis」を活用されているのか、AML/CFT※の実務上の課題などをテーマに情報交換会を開催しました。

コンテンツとしては、ユーザー様事例として福岡銀行クオリティ統括部寺沢様、伊予銀行コンプライアンス統括部高瀬様に発表いただき、主催者講演、交流型のグループディスカッション、3時間半に及ぶものでした。
イベントレポートとして当日の内容の一部をご紹介します。(前編)

※CDD(Customer Due Diligence):顧客等の本人確認や属性情報の確認等を指す
※KYC(Know Your Customer):顧客の属性確認・チェック
※AML(Anti-Money Laundering):マネー・ローンダリングに関する一連の対策
※CFT(Countering the Financing of Terrorism):テロ資金供与対策

福岡銀行様 Orbisの活用事例

ふくおかフィナンシャルグループ 寺沢様
ふくおかフィナンシャルグループ(以下FFG)は、その傘下に福岡銀行・熊本銀行・親和銀行・十八銀行を抱え、証券やカード会社も含まれます。以下の発表をされた寺沢様はクオリティ統括部に所属され、2018年7月からマネー・ローンダリング(以下マネロン)対策を担当されています。

(寺沢様)
2018年4月にAML/CFT専門部署を立ち上げた当初は外為マネロン担当者が1名のみであったが、その後増員などの態勢整備を進め、AML/CFTに注力してきた。今後は行内外からより詳しい説明を求められることが想定されるため、一層気を引き締める必要があると感じている。

1.AML/CFT管理態勢の全体像(海外関連取引)
AML/ CFTに対する日本の動きとしては、犯罪収益移転防止法(以下犯収法)、犯罪収益移転危険度調査書、金融庁マネロンガイドラインが発表されており、FFGもこれらに対応するために「リスク評価書の作成」と「継続的顧客管理態勢の構築(実施途中)」を行っている。莫大な制裁金やペナルティが課される可能性や風評リスクもあるため、AML/CFT態勢作りは経営課題として認識している。

2.AML/CFT管理態勢(グループ体制)
FFG傘下の各行、各社が1線として顧客対応を行い、2線はFFGクオリティ統括部、3線はFFG監査部であり、FFG内の全ての企業案件をチェック・管理している
クオリティ統括部では経営層とコミュニケーションしつつリスクベースに応じた高リスク取引の確認業務と1線の有効性検証や研修実施等を管轄している。

3.AML/CFT管理態勢(海外取引関連)
海外関連取引の主業務は、「外国為替(主に外国送金)」「海外投融資」「コルレス銀行管理※」の3つ。
その管理態勢は、
 ■毎年更新するリスク評価書にて高リスク取引を設定し、各取引の入口チェック、モニタリングを実施
 ■AML/CFTに懸念がある場合は営業店頭の1線、または2線のクオリティ統括部の判断で取引の制限を行う
 ■疑わしい取引の届出は、1線もしくは2線が起票し、2線のクオリティ統括部にて稟議決裁

当該業務の難しいポイントは、何をもって取引制限とするかの判断である。判断根拠は、合理的な説明が求められるため、各案件の「顧客属性」「(相手方の全体像を含めた)取引の相手方の属性」「資金原資」「取引の目的」を確認している。
これらの中で一番難しいのは「取引の相手方の属性」であり、属性確認のためにOrbisを利用している。

※コルレス銀行(Correspondent bank):外国送金の際に、当該通貨の取り次ぎを行う銀行

4 .外国送金受付時のマネロンチェック
まず、営業店の一次チェックにて、経済制裁対象者※は全件確認する。高リスク国・地域への送金は本部にて二次チェックを行い、法人の場合は実在や実質的支配者の確認、所謂EDD※を実施。

Orbis導入以前は、法人の実在性、制裁対象者の該非判定、実質的支配者、ネガティブニュースを担当者が個々にインターネットや別のスクリーニングツール等で検索していたが、担当者によって情報の量や質に差がつくだけでなく、作業そのものに相当の時間を要することが課題であった。Orbisを利用してからは、業種や法人情報の変更等の追加情報も含め、作業時間が短縮できただけでなく担当者による偏りもなくなり、正確かつ網羅的に情報を得られるようになった。現在はこのチェック手順を仕向送金だけでなく、被仕向送金にも適用している。

※経済制裁対象者:イランや北朝鮮など経済制裁対象国の法人・人物
※EDD(Enhanced Due Diligence):CDDよりもさらに深く詳細な顧客確認を実施すること

5 .Orbis活用例①(中国への海外送金)
中国の企業の場合、英文商号で検索しても該当しない場合もあるので、現地語で検索している。また、取引先に「統一社会信用コード※」をヒアリングし、同コードで検索をしている。

Orbisで確認できない場合かつリスクが相当高い場合は、現地事務所にて商業登記や登録証などの謄本を取得し、現地調査を行うことで対応している

※統一社会信用コードUSCI(Unified Social Credit Identifier):中国の工商局が設定する18桁の組織識別番号で統一企業コードとも呼ばれるコード

6 .Orbis活用例②(シップファイナンス等の海外投融資案件)
海外投融資案件は、営業店または営業本部の一次チェックにて、当該企業や関連企業の海外当事者(企業および代表者等)を全件確認し、2線本部にて二次チェック行ったうえで、投融資の稟議決裁を受けている。
Orbis導入前は、海外関係当事者(例:船主、用船者、船舶管理会社、造船所、買主、アセットマネージャー)の商業登記などの謄本を取得し、関係者を別のスクリーニングツールで個別に確認していたが、Orbis導入後は営業所管部署でチェック項目をまとめて確認することで、作業時間の大幅な短縮につながった。

今後についても、どこまでチェックをやるべきなのか、どこまでチェックできるのかを行内外で意見交換しながら方針を決めていきたい。

伊予銀行様 Orbisの活用事例

伊予銀行 高瀬様
ご担当の高瀬様はコンプライアンス統括部に所属されており、2018年8月からマネロン業務を担当されています。過去には同行シンガポール支店の開設に携わり、FATF対応を行った実績があります。

(高瀬様)
1.伊予銀行の特徴
瀬戸内圏域を中心とした13都府県に、地銀第1位の広域店舗ネットワークを構築している。愛媛県は各圏域に全国トップクラスのシェアを誇る産業が集積しており、それぞれに海外送金や海外融資のニーズもある。

2.船舶融資の高度化
愛媛県は海事関連企業の一大集積地であり、伊予銀行はシップファイナンスにも強みを持っている。近年、傭船先のオペレーションが国内から海外にシフトしているため、海外企業に対するリスク管理の重要性が高まっている。

3.AML/CFT対策への取組み
海外企業に対する徹底的な調査・検証を行うため、海外案件(船舶融資、市場性融資、クロスボーダー・ローン等)や海外送金(含む貿易取引等)についてはKYCC※の目線も取り入れ、関係する法人・個人の調査にOrbisを利用している。
主な調査対象は、船舶保有者(船主)/用船者(海外オペ)/船舶管理会社/マンニング会社(船員配乗)/造船会社/荷主/送金依頼人/実質的支配者等。
また、「顧客リスク格付」を導入するため、海外企業管理ツール「Compliance Catalyst」導入を決定した。

※KYCC(know your customers’ customer):顧客だけでなく、顧客の顧客まで属性確認をすること


4.Orbis活用事例【船舶融資案件】
シップファイナンスの際には、「外航船舶関連企業チェック表」をもとに案件に関わる海外企業のすべてが調査対象となるが、法人、役員、主要株主、ベネフィシャルオーナー(以下BO)※(実質的支配者)
、外国PEPs(公的要人)※について全てを独自に調査することは非常に困難である。また、関係者にネガティブニュースが存在すれば、コンプライアンス統括部の所見付記を必須とする運用としている。

Orbisを導入してからは、案件に関わる法人とその取締役、主要株主、実質的支配者を特定し、サンクションリスト、PEPs、ネガティブニュース等の該当有無とその内容をワンストップで確認できるようになった。また、英語以外の言語でも検索ができることもOrbisの利点だと感じている。また、該当する内容によってはコンプライアンス統括部内や外部(弁護士等)と協議し、経営会議にて決裁を諮っている。
補足として、小さい企業等Orbisで企業特定ができない、または属性情報がない場合、証跡として「情報がなかった」記録を残すという運用ルールを検討している。

※ベネフィシャルオーナー(Beneficial Owner):実質的にその企業を支配または所有している法人または個人)
※外国PEPs(公的要人):犯収法に規定される外国の国家元首、総理や大臣、行政庁など重要な地位を占める人のこと
※サンクションリスト:取引が制限されている団体や個人、安全保障上の懸念のある団体や人物として規定されたリストであり、Entity ListやOFAC、日本では経済産業省などが管轄するリストがある

5.外国企業管理
金融庁ガイドラインへの対応、KYCからKYCCへと顧客管理の対象拡張のため、顧客リスク格付は必須となったが、自行が情報を保有していない外国企業をリスク評価、管理することは非常に難しい。そこでCompliance Catalystを利用し、あらかじめ設定したスコアリングモデルによってリスク評価を行うことで、継続的なモニタリングが可能となる。また監査対策のための情報保管も容易になる。


~後編に続きます~

後編では主催者講演に加え、参加行庫同士のグループディスカッションの様子をレポートしていますので、あわせてお読みください。

後編:【レポート】AML対応情報交換会を開催

【レポート】AML対応情報交換会を開催(後編)

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